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【RYS】episode50「製薬の最前線に潜入!2015」

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 8月19日(水)、大阪学芸中等教育学校学問探究団RYSのメンバー28名は、京都市南区にある「日本新薬株式会社」の本社工場を訪れました。今回は2年前のRYS25に続き2回目の訪問でした。製薬会社の開発現場を見学させていただくという貴重な機会を2回も与えていただき、我々は本当に恵まれていると思います。

 日本新薬は1919年創立の大変歴史のある企業です。その社名には「日本人の服む薬は日本人の手で創りたい」との思いが込められており、ドラッグストア等で買う「一般薬」ではなく、主に病院や薬局で処方してもらう「医療用医薬品」の開発をされております。最近、巷でよく聞かれる「ジェネリック医薬品」などは扱っておられず、新薬の開発にこだわっておられる会社です。

 まずは新薬ができるまでの行程について説明していただきました。

 薬のもととなる物質を見つけるためには、植物や鉱物などの天然素材から見つける方法もありますが、過去の文献や自社のライブラリなどのデータベースやX線結晶構造解析などをもとに、化学合成によって人工的に作り出す手法が主となっています。しかしながら、この手法で有効成分を見つけることは容易ではありません。
 
 新薬が開発されてから世にでるまでには9~17年もの歳月がかかり、その費用も150~200億円もかかるそうです。しかも、2006年から2010年までの5年間、創成された化合物の数が673,002個あるのに対し、実際に臨床試験まで進んだものは83個、そしてそこから製品として世に出ることを許されたものが22個と、世に出るまでの確率は実に3万分の1という非常に難しいことなのです! 
 
 みんなが何気なく服用している薬の開発には、膨大な時間とお金がかかること、そして研究者の方が一生の間に1回でも新薬を見つけ出すことは実はとても難しいことなのだと実感しました。

 その後、簡単な薬の崩壊実験をさせていただきました。3種類の錠剤を水に入れて、その溶け方について観察しました。3種類のうち、1つはすぐに溶けてしまい、2つめはちょっとしたら溶け、最後の1個についてはほとんど溶けませんでした。溶け方に違いがあるのは、例えば胃で溶けて欲しい薬、腸で溶けて欲しい薬など、薬が効いて欲しい部分でうまく溶けるようにするためです。カプセルについても同様で、水を飲んでカプセル型の薬を飲むことで、胃に届いてから溶けるようになっているのです。水なしで飲んでしまうと食道の壁にピッタリくっついてしまい、そこで炎症を起こしてしまう可能性があるとのことでした。

 つまり、錠剤を噛み砕いて飲んだり、カプセルの中身を出して飲んだりすると、溶けるべきところで溶けず、薬が効かなかったり、危険な状態になったりすることがあります。絶対にやめましょう!

 最後に、研究施設の見学をさせていただきました(ここは写真撮影ができませんでした)。

 薬の形状(錠剤・カプセル等)について研究している製剤開発担当、有機化合物を創ってその有効性を研究している探索研究部、そして、化合物の安全性を確認する安全動態研究部の3つの場所を見させていただきました。研究者の方々とも直接お話をさせていただき気がついたことは、「製薬会社の方々は必ずしも薬学部を出ているわけではない」ということです。理工系の研究者や獣医学部を出た人も多くいらっしゃいました。ただし、ほとんどの人が最低6年間(学部に4年間、大学院修士課程に2年間等)学んで来た人のようでした。やはり、高度な専門性が必要になるそうです。今回参加した生徒のほとんどが、薬学部に興味がある生徒達であったと思いますが、製薬会社で働くのであれば、決して薬学部にこだわる必要が無いことがわかりました。

 今回は、生徒達にとって大変有意義な機会になったと思います。日本新薬のみなさま、ありがとうございました。

<生徒の感想>
・同じカプセルでも色々な色があることを知りました。難しい言葉もわかりやすく教えてくれて良かったです。あまりこういったところに来ることができる機会はないので、今回来られて良かったです。
・薬が安心して使えるのは、色々な人の時間と動物たちの命がかかっているからだ、と感じました。
・製薬会社で働く人は全員が白衣を着ていて、マスクをしている、というイメージだったけど、会社の中にいろんなグループがあって、いろんなことをしている人がいて、イメージとは全然違うな、と思いました。
・自分がいつも飲んでいる薬がすぐ溶けたり溶けなかったりするのがはじめてわかりました。実験用のサルが1匹100万円くらい、犬が12万円くらい、マウスが600円くらいというのを聞いた時に、命には変わりがないのに値段がこんなに変わるってちょっと残酷だな、と思った・・・。
・薬ができるまで長い年月がかかる上に、できる確率がきわめて低く、莫大な費用がかかるけど、それぞれの品質がとても良くて、みんなのためになっていることを知り、凄いな、と思いました。
・新薬が販売されるまでに長い時間がかかるのは、以前にESDで調べて知っていたが、詳しい中身は知らなかったので、時間だけでなくコストもかかることを知れた。今、存在している薬が、低い確率のもとで生まれたんだと知れた。
・将来の夢を決めるのに非常に役に立ちました。インターネットで情報を得るだけでなく、実際に行ってみることにより、より視野が広がります。